バルセロナで鍼灸師&スポーツトレーナーとして働く南部瑛司さんにインタビュー
昨年10月から弊社と株式会社グランキャリアさんとの共同サポートでバルセロナにて、トレーナー兼鍼灸師としての活動を始めた南部瑛司さん。
(左からヘッドコーチのアンヘル、南部さん、フィジオリーダーのナチョ)
午前中は、テニスのサンチェス・カサルアカデミー施設内のフィシオ(治療施設)で働き、午後からはバスケットボールチーム(大人、ジュニア両方)のフィシオとして働くという多忙な日々を送っています。南部さん自身も学生時代はテニスをされていて、治療だけでなくトレーナーとしての知識も豊富です。今回は、ヨーロッパジュニアと日本ジュニアの身体的特徴の違いを中心にインタビューして行きたいと思います。ではインタビュースタートです。
スペインと日本でジュニア選手に対するトレーニングに違いはありますか?
それほど大差はないと思います。体幹トレーニングやインナーマッスル中心のメニューが多いです。特に低年齢では、重い負荷は使わずに、軽い負荷でスピードを上げていくトレーニングが多いです。
※トレーニングに関しては私も同感です。日本で行なっているトレーニングと大差はないと思います。インターネットによって、世界中でトレーニングの情報が共有されているのだと思います。ただ年齢によってメニューが変わったり、個別に違うメニューを組んだりもするので一概には言えません。おおよそということです。それから、これはテニスの指導でも同じですが、トレーニングのフォームやトレーニングを行う上での注意点などの指導の細かさは日本の方が上だと思います。サポート体制は、テニスコートに併設された広いジムがあり、トレーナーも常時4、5人いるので充実していると感じます。
日本人ジュニアとの身体的特徴の違いはありますか?
私はジュニアテニスの治療をしていますが、治療をしながら年齢を聞いていつも驚かされています。想像している年齢よりも数年若いのです。同年代で比べると、日本人の方が身長も筋肉のつき方にしても劣っていると感じます。10歳〜12歳では身長の差はありますが、筋肉のつき方は、それほど差はありません。
ですが、15歳くらいになると明らかに筋肉のつき方が違ってきます。日本では筋肉のつき方が大きい部類に入るジュニアが来ても、普通サイズどころか小さい部類に入ってしまうでしょう。中学3年生以上になると、体幹・太もも・腕などの太さ、筋肉のつき方が日本人と比べて全然違います。筋肥大のトレーニングをしているジュニアは少ないので、先天的な差が大きいと思います。
(選手を治療するアカデミー内のフィジオ)
スペイン人ジュニアの肉体で気づいたことはありますか?
治療して身体を触っていると、筋肉の一つ一つが大きく感じます。ただ、柔軟性を高めることをあまりしていないので、柔軟性がないと感じます。それが怪我に繋がっていると感じます。日本人ジュニアにも同じことが言えますが、外傷(捻挫など)よりも、スポーツ障害が多いので、柔軟性を高めることはとても大切だと思います。競技レベルは柔軟性では大差はつきにくいですが、怪我には大きく関係します。
フィジカルの違いはテニスにどのように影響していますか?
筋力面ではヨーロッパジュニアの方が上です。ですから、手打ちでもボールが飛びます。日本人が同じクオリティのボールを打とうと思えば、身体をより効果的に使うことを学ぶ必要があると感じます。日本人の筋力では同じようにボールを飛ばすことは難しいと思います。
治療に関して、日本人の治療の感覚は通用しますか?
身体のサイズ的な誤差を修正すれば、人体の構造は同じなので、治療家として通用します。ただ日本では鍼灸はメジャーですが、こちらではまだメジャーではありません。現在は、受け入れてもらうのが大変です。こちらでも鍼灸の治療で効果的に治療できていると感じるので、頑張って広めて行きたいと思いっています。
フィジカル的に劣る日本人はスペイン人と同じテニススタイルでいけると感じますか?
肉体では劣りますが、コンタクストポーツ(身体の接触がある、アメフトやサッカーなど)ではないので、パワーで対抗し過ぎずに、スピードや確率、メンタルなどで対抗していけば勝てる可能性は高くなると思います。ですから、スペイン人とまったく同じスタイルを模倣するだけでは、厳しいと感じています。
(フィジオの壁には漢字が飾られています。)
治療家兼トレーナーという視点から見て、日本人独自のテニススタイルを作り上げていく上で大切なことはどんなことですか?
身体作りをうまくやっていく必要があると思います。
①故障しないための身体作り
②勝つための身体作り
のバランスを極めて行かないといけないと感じています。
スペインでも有名なビッグテニスアカデミーで働いていますが、どのような印象を受けますか?
テニスの練習・フィジカルトレーニング・治療の全てが一つの施設内でできるのは、素晴らしいことだと感じます。また、選手の体調管理はフィジオが行い、テニスコーチ・フィジカルトレーナーとミーティングをして一元管理しています。理想的な環境だと思います。練習に関しては、基礎を大切にしていると感じます。とにかく基礎的な練習を積み重ねています。
日本との違いを感じるのはどんなところですか?
こちらでは『休むこと』を大切にしていると感じます。ジュニア選手は、少しの痛みでもフィジオに来ます。軽い痛みでも来て治療を求めます。それに比べると、日本のジュニアは、痛みに我慢強いのか、痛みがひどくなってから来るように思えます。
こちらの方が、ひどくなる前にストレッチなどの指導ができます。少しの痛みでも自己主張できるのは、こちらのジュニアの良いところだと思います。また低年齢のジュニアにテーピングをしてまで無理にプレイさせることはありません。休むことの大切さを指導しています。
特に低年齢では、それほどハードにトレーニングを行いません。インターネット上では、トップ選手のトレーニングの分かりやすいハードな部分だけ発信する傾向にありますが、それは良くないと思います。
(同じくサンチェス・カサルアカデミーでテニスコーチとして働く寺島コーチとジュニアの試合を見ながら語り合う)
インタビューは以上です。治療スタッフ兼トレーナーということで、同じくバルセロナのサンチェス・カサルアカデミーで、テニスコーチとして働いている寺島コーチとは少し違った視点で答えてくれました。わかってはいましたが、肉体的にはどうしても劣ってしまう日本人。それでも勝つ可能性を探ることで、テニスが向上します。選手だけでなく、治療スタッフとして海外に挑戦する南部さんをこれからも応援したいと思います。
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