ヨーロッパのお父さんお母さんから学んだ、日本にはない唯一の価値観。


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現在8名のジュニアと1名のコーチの引率でスペイン、バルセロナにあるサンチェス・カサルアカデミーを訪れています。私自身が14年前に1年3ヶ月滞在し選手として修行を積んだ場所でもあります。テニスはもちろんのこと、ヨーロッパのスポーツ施設には必ず『バル』と呼ばれる軽食が食べられてお酒が飲めるレストランバーが併設されています。大型テレビもあり、みんなタパスと呼ばれる小皿料理をつまみながらお酒を楽しみ、話を弾ませています。特にサッカーのFCバルセロナの試合の前後のバルセロナのバルでは、みんな口角泡を飛ばして、サッカー談義をしています。

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サッカーを熟知しているファン

実際に私もバルセロナのホーム、カンプ・ノウスタジアムで試合を観戦したことがありますが、9万人ほどの観客のほとんどがサッカーを深く理解し、それが応援となって現れていることに驚かされました。

①相手チームにボールを取られると一斉にブーイング、そしてボールを奪い返すと拍手→相手チームにプレッシャーをかける
②攻撃をシュートで終わらせると、とんでもなく外れたシュートでも拍手→攻撃の姿勢は必要だという後押し
③攻めずにボールを回しているだけになると、味方なのにブーイング→攻撃的なサッカーができていないというプレッシャー

などここは劇場なのかと思うほど、観客が勝手に演出をして盛り上げます。そして試合後は、バルでビールを楽しみながらサッカー談義に花を咲かせます。ヨーロッパのサッカーを盛り上げているのはまさしくファン達のバルでのおしゃべりなんです。

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バルで熱心に話をしている様子を見ているとある情景とリンクした

それはジュニア選手のご父兄の方々が、テニスの練習や試合を見ながら同じように立ち話をしている姿です。家庭ではどのようなプランでテニスをさせているのか?今どこのテニスクラブがいいのか?進学はどのように進めていくのか?などなど内容は尽きないでしょう。ジュニアテニスは間違いなくお父さんお母さんのおかげで盛り上がっています。あの立ち話が未来のテニス界を支えている、バルセロナのサッカーと全く同じだと思います。実際、保護者の方々は、テニスのことを本当によく理解していると思います。

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親が練習・試合を見るのは世界共通

私は、お子様を強くさせたければ、ご父兄の方々は練習や試合をできるだけ見た方がいいという考えです。特に日本のコーチはジュニアの試合すべてに帯同できるわけではないので、保護者レポートはとても重要な情報になります。そうすることでジュニア選手・親・コーチが一つのチームになることができればいいと思います。(もちろん信頼するコーチに完全にお任せすると言う方針の場合、この限りではありませんし素晴らしい関係だと思います)ヨーロッパとアメリカのテニスクラブを回ってきましたが、日本と同じように、たくさんの保護者の方がお子様の練習をコートサイドで見守っています。試合に連れていくのは親が多いですし、もちろん試合も熱心に見ています。そういえば15年前バルセロナに留学していた時に当時高校生だったアンディ・マレーが同じクラブで練習していましたが、マレーのお母様も毎日のようにコートサイドで見かけましたね。テレビで見た時は、『あっ!!あの時の人だ!!』って感じでした。

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色んなタイプの保護者がいるのも世界共通

練習を静観している親もいれば、練習後に激しい口調でアドバイスしている方もいます。マッチ練習中にコーチを押しのけてアドバイスする親も入れば、個人レッスン中にボールを拾ったり、レッスン後にコーチを呼び止めて話し込んだりとこの辺りは世界共通なのかなと思います。

日本にはない唯一の価値観

それはお子様が負けてしまった時の対応です。負けてしまったお子様に対しては優しい対応をすることが多いのがヨーロッパの特徴だと思います。英語で言うところの『Bad Luck』や『Bad Day』。運がなかった、ツキがなかった、うまくいかなかった。そんな意味でしょうか。そう言う価値観でお子様を包み込んであげているように感じます。甘やかしているとか過保護とか言うよりも、これは勝負事に対する価値観の問題だと感じています。

負ける=ダメなことではない

私もそうですが、日本では負けることを悪いことのように考えすぎてしまいます。負ける=ダメなことと言う図式が成り立っています。対してヨーロッパでは、負けることは勝つことの一部であると言うような考え方がベースにあります。勝つためには負けることも必要なのだと言う勝負事に対する理解が一歩深いような気がします。先のサッカーの例のように、文化としてスポーツが根付いているヨーロッパでは、スポーツの勝ち負けに対する価値観も確立されているのでしょう。失敗してもシュートで攻撃を終われば拍手。攻めずにボールを回しているとブーイング。などは結果だけでなく過程の重要性をファンが良く理解しているからできることです。そういったこちらの保護者の対応を見て、私も負けた選手へのこれまでの対応を反省してしまいます。負けた理由を分析して、その場ですぐに伝えることで仕事をしていた気になっていたのかもしれません。

失敗・負けに寛容に

先日のこの記事にもつながるのですが、

練習中の日本人とヨーロッパの選手を比較してわかった日本人に欠けているたった一つのこととそれにまつわる決定的な事実!

失敗を繰り返すことで展開力は身につきます。負けることで勝つために必要なことがわかります。これまでを反省しながら、そんなことをバルセロナのコートサイドで感じています。

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