スペインのテニスコーチ達との立ち話から学ぶ、ジュニア選手への伝え方の大切さ。
『俺たちがジュニアだった頃は。。。』
ジュニアテニスを経て、コーチになって選手育成に携わると、ほぼ全員が頭によぎる言葉です。
頭によぎるものの、現在のジュニアにも教えたいことの本意が伝わるように、教え方を工夫する。そういうことって日本国内だけのことだと思っていました。
スペイン遠征
2018年2月21日〜3月7日という日程で行ったスペイン遠征の練習環境でも、同じことを聞いた時は、少し安心したというか世界中、指導者の悩みは同時進行で変わっていっていると感じました。
スペイン、アリカンテというバケーションのシーズンには、ヨーロッパ中から、休暇を楽しみに人が押し寄せるリゾート地。大学の敷地内にあるテニスコートを使って運営しているテニスクラブにお邪魔しました。
とあるセリフ
『スペインの子供達もどんどん変わっていく。昔は、一家に一台しかテレビがなく、そのチャンネル選択権は父親にあり、威厳があった。でも今は、スマホの影響で1人に1台、画面がある。子供達は自由になり、ハングリーさを失った』
まさか、そんなセリフが飛び出すとは、思ってもみませんでした。そう言ったのは、ファン・エスパルシアコーチ。世界最高23位で今も現役を続けるギジェルモ・ガルシア・ロペス選手のツアーコーチを数年前までやっていたコーチで、ギジェルモとのタッグでナダルを倒したこともある名コーチです。
ギジェルモをジュニア時代から指導し、昨年までは中国のジュニアトップチームを指導していた、ジュニア指導にも精通しているコーチです。
日本であれば、そう言ったいわゆる実績があるコーチの前では、ジュニア選手は、言うことをよく聞いて規律正しく練習するもの。でもそこはスペイン。感情表現が豊かで、エスパルシアコーチに対しても、やりたくないことはやりたくないと言うし、あからさまに集中力を欠いたプレイをします。
コンコンと説く
そんな時でも、エスパルシアコーチは、声を荒げることは決してしません。頭ごなしに注意はせずに、テニスにおいて集中が難しい状況下でどんなことをしてリカバリーすればいいのかを、コンコンと説きます。言われたジュニアは、少しずつ足を動かし始め、元のパフォーマンスに戻ってい来ます。しかし毎回そううまくいく訳ではなく、最悪のパフォーマンスで練習が終わることもあります。
ちょうどその日は、残念ながら選手の集中力は回復せず、よくない雰囲気のまま練習が終了しました。私と、エスパルシアコーチ、そしてそのクラブで働くコーチ2人(1人は、ジュニアスペイン1位の選手を幼少の頃から育成したことがあるコーチ、もう一人は、元ATP二桁の選手で現在はツアーコーチ、2人とも素晴らしいキャリアの持ち主)の4人で少し立ち話になりました。
エスパルシアコーチ:『スペインの子供達もどんどん変わっていく。昔は、一家に一台しかテレビがなく、そのチャンネル選択権は父親にあり、威厳があった。でも今は、スマホの影響で1人に1台、画面がある。子供達は自由になり、ハングリーさを失った』
コーチA:『我々の時は、何があっても「頑張れ!頑張れ!」と言われて何十球も何百球も打たされたもんだ。我々も必死に食らいついた。』
コーチB:『でも今はそう言うやり方は通用しなくなったね。それでは良い方向に進まなくなった。』
稲本:『日本もスペインも同じだね。ちょっとびっくりしたよ。スペインは、熱い魂で今も昔も変わらないと思っていたよ。』
現地のコーチ達の、決して口調を荒げることなく、同じことを繰り返し繰り返し教え諭すような指導の姿勢はとても勉強になりました。
変わらぬ基本と変わっていく伝え方
ジュニア達に指導するテニスの基本は変わりませんが、その『伝え方』には変化が必要です。子供達を取り巻く環境は、大きく変化しています。ただ単に、自分達のジュニア時代よりも恵まれているということではなく、自分達の時代にはないストレスやプレッシャーを抱えていることも理解しなくてはなりません。
そんなことを考えたスペインでの立ち話でした。
立ち話をよそに、練習前は早く来て、任天堂スイッチをやっていた件のジュニアは、保護者のお迎えまで黙々と宿題。世界中子供達は大忙しです。
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