自分の頭で考えようと声をかける時に思うこと


私たちの世代(私は1976年生まれ)は、常に「自分の頭で考えろ」と言われて育ったように思います。
しかしその言葉を指導の現場で使うことに違和感を覚えることがあります。

もちろん、テニスで勝つためには自分の頭で考えることは必要不可欠です。
自分の判断を信じて行動することが絶対的に必要です。

ですから選手が自分の頭で考えて打ち方を工夫したり、ショット選択を考えたりしている時は、精一杯肯定して、せっかく芽生え始めている自主性の芽を摘まないようにしています。私はそれを全面的に支持し、その自主性をできるだけ尊重するように努めます。

ですが指導者が、「自分の頭で考えよう」と口にする場合、2つの懸念点があります。

・選手は「考える」とは具体的に何かを理解しているのか?
 まだテニスについて考える習慣がない年齢またはテニス歴の頃は、何についてどう考えるのか?という思考の補助線を引いてあげないと、選手は何についてどう考えれば良いのかがわかっていません。それなのに、考えた末の正解はコーチの頭の中にあるような気がして、とりあえず正解を無闇に探してしまいます。結果として、「何が悪いのか考えろ」と言われても、「足を動かします」などのテニス全般に必要な答えを言って終わってしまいます。コーチがいくら「何を言っても構わないよ」と言っても、そもそも何について考えて良いのかわかっていないため、思考が広がりません。最初は数学である程度の公式を頭に詰め込むようにして、テニスはどういうことに頭を使うのかを教えてあげる必要があります。

・選手は自分の枠を超えて考えることができるのか?
経験が浅い選手はメタ認知が苦手です。自分のことを客観的に捉えることができません。したがって、速いボールを打てば勝てると思っています。また今のままで取り組めば、そのうち勝てるようになるとざっくりと考えています。その自分の枠を超える思考の仕方を教えてあげないことには、自分の頭で考えようにも、結局は根性論になってしまいます。まずは思考の枠組みを広げてあげて、自らの可能性の高さを感じさせてあげることが大切だと思います。全国大会に出る選手とそうでない選手の差はどこにあるのか?その視点を与えてあげることも大切なことです。全国大会に出ている選手と優勝する選手の差についても同じです。たくさんのコーチの意見を聞いて、できるだけ多くの視点を持つことが、将来自分で考えるための礎になります。

自分の頭で考えることは大切なことですが、放っておいても選手はいつか自分の頭で考えるようになります。その時にどんなことを考えて欲しいのか?またどんなことは考えなくても良いのか?を最初の段階から示していくことは大切なことだと思います。

「自分の頭で考える」ことの大切さは理解していますが、選手が真に自分の頭で考えるようになるためには、指導者として最初の段階で適切な指南やフレームワークを提供することが必要だと感じています。指導者が「自分の頭で考えろ」と伝える際には、それを補完する具体的なアドバイスやガイダンスが欠かせないと思います。

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