自分のおかげで上手くなったとドヤ感を出してしまうコーチ
物語を書いていると、時折、作中の登場人物が実は自分の反映であることに気づくことがあります。
僕が書き手として、これまで出会った人たちのエッセンスを取り入れたり、理想的なキャラクターを描こうと努力しても、
それらの人物像は結局、自分の価値観や見方で色付けられているものです。
僕の小説『ぺしゃん』シリーズには、いつも2人の主人公が登場します。
シリーズを通して、テニスコーチの渉というキャラクターが継続して登場しています。
彼はコーチとして高い志と情熱を持ちつつ、時として余計なことをしてしまう性格を持っています。
渉は、自分のアドバイスや練習の指導が生徒たちの上達の理由だと内心思いたがります。
良いアドバイスを提供し、質の高いレッスンを行いたいという気持ちは、非常に大切なのですが、
その結果として生徒たちが上手くなったと自慢したくなる気持ち、そのドヤ感を出したい欲求には注意が必要です。
大人な考えだと生徒を中心に考える姿勢と、自分の成果をアピールしたい姿勢との間には、バランスを取る必要があると言えると思います。
ドヤ感は自身の内側に留め、口に出す言葉は、「選手の頑張りのおかげ」と言っておくのが手っ取り早い正解です。
ですが、ついつい余計な言葉を付け足してしまい、ドヤ感を匂わせてしまうのが人間ではないでしょうか?
彼は熱心に努力するコーチで、運動科学の本を読み込み、指導方法の研究も怠りません。
しかし、そのドヤ感を完全に抑えて指導するのはやっぱり難しいのかもしれません。
彼の想像通りにはジュニア選手たちは上達してくれませんが、時に彼の想像を遥かに超えてくジュニア選手たちは成長します。
そんな時、コーチはドヤ感を出せずただ感動してしまいます。
フィクションを書きながら、これはノンフィクションではないかと思ってしまいました。
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