錦織選手のジュニア時代の戦績からわかる好成績よりも大切なこと。
オーストラリアンオープンジュニアで活躍した選手の大会選びやチャレンジの様子を何回か書いてきました。こちらは全豪ジュニア女子優勝コステュック選手について。
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今日は錦織選手のITFジュニア大会のチャレンジの様子を調べてみたいと思います。
調べたのはシングルスのみです。データは西暦とその年の4月からの学年を表記しました。錦織選手は12月生まれです。日本だと早生まれの恩恵を受けられず、一番苦しい生まれ年です。そして彼くらい期待されている選手だと、さぞかしWCをたくさんもらって効率よくランキングを上げていったと想像してしまいますが実際はどうなのでしょうか?Gから始まる表記は大会のレベルを表します。グレードのGです。G5〜G1と数字が少なくなるとレベルが高くなります。またG1の上にはGAなどがあります。大阪で行われるスーパージュニアやグランドスラムジュニアがGAに当たり、最高レベルの大会です。
2002年・中学1年生 1大会出場(WC)
日本でのG1大会にワイルドカードで1大会のみ出場です。予選初戦敗退です。
2003年・中学2年生 5大会出場(WCは1大会のみ)
日本でG1大会ワイルドカードをもらってます。それ以外は海外でG5・G3・G4・G4に出場しています。ワイルドカードをもらった日本でのG1以外は低いレベルの大会に出場しています。戦績は最高でG5の4回戦です。
2004年・中学3年生 15大会出場(WCなし)
出場大会のレベルの平均・・・G2.4
出場大会の本戦の平均試合数・・・2.3
出場大会の本戦の平均勝利数・・・1.3
一気に出場数が増えています。大会のレベルを数値化するために平均を出してみます。GAは0として計算します。(団体戦であるジュニアデビスカップは対象外にします。)するとジュニアデビスカップを除く14大会の平均は、G2.4という数値になります。まんべんなく全てのカテゴリーに出ている感じでしょうか。1年で見ると前半にG4・G3が多く、後半はG2・G1が多いので、順調にランキングを上げて高いレベルの大会に出場していっているのがわかります。また大会毎の本戦の試合数を平均すると、2.3です。これは全ての大会で、2.3回戦負けということですから、ほとんどの大会で1回か2回しか勝っていないということになります。一度G3で準優勝がありますが、それ以外は上位進出がないことが数字から読み取れます。
2005年・高校1年生 16大会出場(WCなし)
出場大会のレベルの平均・・・G0.93
出場大会の本戦の平均試合数・・・2.7
出場大会の本戦の平均勝利数・・・1.7
昨年とほぼ同じの大会数です。プラスしてこの年はフューチャーズにも1大会だけ出場しています。出場大会の数値の平均(ジュニアデビスカップは対象外)は、G0.93です。なんと1を下回っています。G3に1大会出てますが、あとはG2・G1・GAに出ています。大会毎の本戦の試合数は(棄権負けも1回戦負けとカウント)、2.7です。平均すると2.7回戦負け。大会のレベルは上がっていますが、こちらの数字は3を切ったままです。
2006年・高校2年生 4大会出場(WCなし)
出場大会のレベルの平均・・・G0.2
出場大会の本戦の平均試合数・・・3.4
出場大会の本戦の平均勝利数・・・2.4
この年はITFジュニアは4大会です。理由は一般の大会へシフトチェンジしているからです。ジュニアは卒業って感じです。出ている大会のグレードの平均は0.2で1大会がG1で残りは全てGAです。本戦の試合数は3.4です。ベスト8が2つ、準優勝一つ、そして1回戦負け・2回戦負けという内訳です。
まとめ
データからわかったことをまとめると
①WCは意外ともらっていない
WCは日本での大会で中学1年・2年の時に1回ずつもらっているだけです。
②平均すると1大会に2勝以下。
大会数を増やした2004年からの3年間の1大会平均の勝利数は、
1.3→1.7→2.4
という推移です。がっつり大会数をこなした2004年と2005年の2年間は1大会平均2勝以下です。優勝はなく、ベスト4以上も41大会に出場して5回のみです。高い戦績を残すよりも、高いレベルで戦うことを選択していることがわかります。
③毎年出場試合のグレードが上がっていっている
2004年から3年間の出場大会のグレードの平均は、
G2.4→G0.93→G0.2
という推移です。ポイントを獲得してそのポイントを使って高いレベルの大会にエントリーしていっています。錦織選手ならジュニアの頃から勝ちまくっていたというイメージがありますが、勝ちまくるというよりも、ステップアップしていっているという感じです。
④優勝がない(ベスト4以上は4回)
意外なことに好成績はあまりありません。
②③④のデータが物語ることは、
好成績を目指すよりも、どんどん上のレベルにチャレンジしていこう!!
ってことです。とは言ってもその中で平均2.7回戦まで勝ち上がっているのは、実はすごい数字だということです。(予選を勝ち上がるのでも大変ですから。これは全て本戦のデータです。)レベルを上げていくにはそれくらいの勝ち数でいいのです。かといってこんなにトントン拍子で戦うステージを上げられる選手はいないということなんでしょう。明日は2006年以降の一般の部のデータを衝撃的だったデルレイビーチの優勝まで見ていきたいと思います。
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