偶然性を味方につけろ!


ジュニアの育成をしていて

神経を使っていることの一つに「オーバーティーチング」、

いわゆる「教えすぎ」があります。

テニスは、ミスをたくさんすると負けてしまうスポーツなので、

プレイヤーを勝たせるためにはミスを減らすための

アドバイスをするのが簡単であり、即効性があります。

でもそれでは、プレイヤー自身のああしたい、

こうしたいというチャレンジの機会をコーチがなくしてしまう恐れがあります。

失敗から学ぶ、これが1番だと思います。

とくに、自分から攻撃してポイントを取りに行く能力を高めようとすると、

「教えすぎ」は大きな妨げになるような気がします。

テニスでは、自分から攻撃してポイントを奪える選手は意外と少ないように思います。

特に舞台が大きくなればなるほど、そこで通用する攻撃力を持っているかどうかは、

勝つために大切な要素です。

最近では、インターネット上や書籍でテニス上達の情報があふれています。

それ自体はテニス界にとって、大変プラスだと思いますが、

それを読んだり見たりすることで、誰でもコーチになれてしまいます。

プレイヤーが自分に必要なことに「自分自身で気づく」前に、

どんどん言葉で伝えてしまいます。

言葉で伝えたことで、言った本人は安心するでしょう。

プレイヤーも言われて安心するでしょう。

でもその安心は長続きせずに、コートに立てばまた次の欠点が指摘されて、

また言った方も言われた方も安心して練習終了。

それを繰り返して、大会では思った結果がでない。。。なんてことになりがちなのではないでしょうか。

では、プレイヤーが「気づく」のはどんな時なのでしょう?

うーーん、偶然。。。そうとしか言えない。。。

「そんな無責任な」と言われるかもしれません。

例えば、バックハンドストロークに悩むプレイヤーがいたとします。

彼は練習中フォームばかり気にしてミスを繰り返します。

理想的なスイングを意識しすぎて明らかにボールのスピードが速すぎで、

捕えるタイミングもライジングすぎてミスが減りません。

ミスしたあとは素振りを繰り返し、ラケットの動きばかり気にして足が全く動いていません。

理想を追いかけすぎて、

無茶な打ち方ばかりしていまう悪循環にはまってしまう。

どうしてもスピードと安定感のバランスがとれない。

僕は、「もっと腕をこう振れば。。。」

「左手をこう使って。。。」

「右の肩をこうして。。。」

「ボールを~~するようなイメージで。。。」

など思いつくアドバイスをできるだけしないようにしてました。

少しは我慢できずにしましたが。。。

アドバイスをしたことで、またされたことで安心したくなかったのです。

そんなある時、中間テストでたくさんのプレイヤーが練習を休み、

早めにテストが終わった彼は

いつもはやらない2つも年下の選手と練習マッチをすることになりました。

バックでミスを繰り返す彼にたいして、

ゆっくりとボールをコートに返す下級生のテニスが見事にはまり1-4になってしまいます。

その時、「偶然」は起こりました。

負けられない彼は、なんとかしてバックハンドを入れようとします。

でもここ一カ月の間、

ロブでもいいから入れるなんてことはやってないのでロブは無意識にでてこない。

無意識に足が動き始めます。

コーチに「足を動かせ!」と言われた時とは違う、スイング動作にマッチした動き方です。

ライナー性のバックハンドが

今までミスを繰り返していたスピードの90%くらいのスピードでコートに入り始めます。

結局、苦戦したものの7-5で勝利しました。

試合後にバックハンドの話を少ししました。

彼は理想とは違う為に納得はしていませんでした。

彼の理想が正しいのが間違ってるのかは別にして、

(その判断はコーチによりけりだと思うので)

彼がこの「偶然の経験」で学んだのは「戦う」ということではないでしょうか。

ショットの理想と戦いながら、

敵とも自分とも戦うことを経験できたことは大きな財産だと思いました。

いつも通り、同い年のプレイヤーとの練習マッチなら

「バックの調子が悪いから負けた」と言い訳をして終わっていたでしょう。

長くなりましたが、日々安心して一日を終わるよりも、

安心に頼らずにテニスと勝負としっかりと向き合えば、

「偶然性」は見方になってくれるはずです。

こうやれば、こうすればうまくなって試合に勝てる。

そんな確実性の高い毎日に安心していては「偶然性」は見方にならずに敵になってしまうかもしれません。

それは我々コーチにとってものすごく困難なことかもしれないけれど。。。

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