アンダードッグ


アンダードッグという英語があります。『闘争、競争における敗者または予想された敗者』の意味であり『負け犬』とか『かませ犬』という意味です。『かませ犬』を辞書で調べると『格闘技などで、引き立て役として対戦させる弱い相手のこと。』という意味でした。あまりいい意味では使われない言葉ですよね。
ドイツのサッカークラブに、この言葉を真っ向から受け入れているクラブがあります。ザンクトパウリというクラブチームです。チームに資金力のない小さなクラブなのですが、ドイツの一部リーグ所属で名門バイエルンやシャルケ04などと同じリーグです。お金がなく有名選手は雇えないですが、プライドを持ち、ファンも毎週の試合のたびに熱い応援をします。ファンは『かませ犬』でかまわない、全力で応援すると気合い十分です。『みんなが主役』の社会的風潮の日本人には見習うべき点がたくさんあるように思えました。主観的に『自分が主役』になり、頑張り続けることは重要だと思います。しかし、思春期あたりから客観的に物事を見られるよになり、自分は主役ではないことに気がつきます。その途端、やる気がなくなったり、一生懸命やることに意味を感じなくなるようでは悲しいかぎりです。
前述のサッカークラブは、『引き立て役』であることに誇りを持ち、努力とチャレンジを続けます。その姿勢にファンがつきます。ドイツのブンデスリーガの中では、決して『主役』ではありませんが、ファンがつき経済的にも自立できていることは素晴らしいことだと思います。ヨーロッパのサッカークラブではこのような『格差』の部分をしっかりと受け入れています。スペインリーグにマジョルカというチームがあります。昨年リーグ5位の好成績でヨーロッパリーグに参加する権利があったのですが、チームの負債が多すぎる為に、出場権を剥奪されてしまいました。スペインリーグと言えば、バルセロナやレアルマドリードなど、世界中のサッカークラブの中でも収益のトップに位置するチームが存在します。そのリーグで5位のチームが極度の財政難なんて考えられない『格差』だと思います。負債が多すぎて、有名選手はいない、そしてバルセロナやレアルマドリードの『かませ犬』的な存在、しかし『誇り』をもって戦い続ける。
少し極端ですが、このメンタリティーこそ日本人が見習うべきものであるような気がします。『努力』や『根性』を超えるパワーがそこにはあるような気がします。そこには、できない理由など何ひとつ考えない強い意志を感じます。マジョルカはあのナダルの故郷であるマジョルカ島のサッカークラブです。同じ熱い血が流れているのでしょう。
ではなぜ、彼らが『格差』の中でもそして『かませ犬』でもパワーがでるのかを考えてみようと思います。それは、人生の幸せを日々しっかりと感じることができているから、その能力に長けているからだと思うのです。
有名選手がいないチームなら不幸なのでしょうか?
『かませ犬』なら不幸なのでしょうか?
客観的に見て、自分が『主役』でなければ不幸なのでしょうか?
少なくとも彼らにとっては、『不幸』とは直結しないものなのです。彼らは、心の中に『人生が幸せである』という安全基地を持っています。
以前のブログにも書きましたが、スペインのコーチにもよく言われていました。『たかがテニスじゃないか!』と。日本は経済大国になってしまったがゆえに、幸せはお金で買えると思ってしまいすぎたのかもしれません。もちろん、お金でほとんどの幸せは買えると思います。しかし、アンダードッグを誇りに思えるメンタリティーは買えないのかも知れません。
子供達に伝える前にまずは我々がそのメンタリティーを身につけなければならないのではないかと思います。それには、この不況、デフレの時代はもってこいかもしれません。かませ犬テニスコーチの幸せの遠吠えを聞かせてやろう!
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