お子様のテニス育成にはクレーコートがおすすめな理由!
クレーコートとはどんなコートなのか?
一言でクレーコートといっても種類は様々ですが、広義で土・砂が表面にあるコートという捉え方で良いと思います。日本では土の上に砂をまいて仕上げたクレーコートが多いです。ヨーロッパでは、レンガを砕いた粉を使用するので赤茶色のクレーコートです。アンツーカーコートとも呼ばれています。その他のサーフェイスは、ハードコート・オムニコート・カーペットコートなどがあります。
クレーコートの特徴
バウンド後の球足が遅く、スピンをかけると高く跳ね上がります。球足が遅いので、決まりにくく、ラリーが長くのが特徴です。また足元が滑ります。動き出しが難しい反面、遠くのボールはスライディングしながら対応できます。ハードコートとは、違ったフットワークのテクニックが必要になります。グランドスラムでは全仏オープンで使用されているコートです。
クレーコートに強い選手
クレーキングと言われているスペインのラファエル・ナダル選手に象徴されるように、強烈な重いトップスピンで相手をコートの後方に釘付けにして攻撃を許さず、素早いフットワークでどんなボールにも食らいつき、強靭なメンタルで諦めずに勝利に執着する選手が強いです。華麗でかっこいいテニスをする選手よりも、どちらかというと泥臭く粘り勝つ選手に軍配が上がりやすいのがクレーコートの特徴です。
日本には少ない?
残念ながら日本には少ないコートです。主にヨーロッパに多いサーフェイスで、選手育成に効果があると言われてからオーストラリアやアメリカでも積極的に取り入れられています。日本に少ないのは、
・雨が降ると水が溜まってしばらく使えなくなる
・メンテナンスにコストがかかる
などの理由が考えられます。国際的にジュニア育成にはクレーコートが必要というのが共通認識としてあります。日本に多いのはオムニコートで、表面に砂があるという点で似ていますが、クレーコートで戦うことで得られることという観点から見ると似て非なるサーフェイスです。
クレーコートでプレイすることでどんなことが得られるのか?
打ち方
・スピンと重さ
スピンをかけるようになります。スピンをかけることで安定した軌道を作ることができる上に、バウンド後に弾むボールになり相手にとって打ちにくいボールになります。また回転量が多くなると相手に『重い』と感じさせるボールになります。ボールとラケット面が擦れすぎるあたりを、『薄いあたり』と表現しますが、『薄いあたり』のスピンではボールは重くならずに軽くなってしまいます。ボールとラケット面をしっかりとぶつけるような『厚いあたり』のトップスピンが必要になります。
・合わせずにしっかり打つ癖がつく
軽く合わせるような打ち方では、ボールが軽くなって伸びないのがクレーコートの特徴です。あたりを厚くしてしっかりと撃ち抜かなければ相手に攻められます。毎回しっかりと打つ意識が身につきます。しっかりと打つにはスタンスを広く取り、身体を捻って準備する必要があります。結果として良い打ち方が身につきます。
・足が滑るのがしっかりした打ち方に繋がる
下が土なので足が滑ります。そのことがプラスに働きます。スタンスを広くとり、バランスが取れた姿勢を作らないとうまく打てません。突っ立った状態の手打ちではボールは弱くなってしまいます。自然に良いフォームになります。
言葉を使ったアドバイスよりも良い打ち方が身につく
まさに必要は発明の母で、しっかり打つ必要があり、しっかり打つには滑る足元からボールにうまく力を伝えなければならないので、効率的な良いフォームが身につきます。
・バランス感覚が身につく
前後左右に大きく振られた時、止まるためにスライディングします。その際、バランスを取って次の動きに備えようとします。バランスが悪い選手は体重が流れて次の動きには入れません。バランスを保つ筋力・バランスを保つ身体操作が身につきます。
・高い打点の習得に良い
相手のボールが高く弾むので高いボールの処理を学ぶことができます。高く弾むボールを攻めていくのか?それとも下がって一度守るのか?ボールの打ち方だけでなくその判断力もなければ、うまく処理することができません。クレーコートの経験があれば打ち方も判断力も学ぶことができます。
戦い方
・攻守の切り替え
速いボールを打っても簡単には決まらないので、攻めと守りのバランスが大切になります。他のサーフェイスと比べてもディフェンス力の必要性は増します。ですが守ってばかりでもポイントは取れないので、1つのポイントの中で攻めと守りを切り替えながら戦うことを学ぶことができます。
・多彩なショット
球足が遅いことで、相手からポイントを取るために、様々な組み立てが必要になります。アングルショット・ドロップショット・スニークインなど言葉になっている組み立てに加えて、相手から時間を奪うアイデアや動きの逆をつくアイデアなど、その場の発想でポイントにつなげる能力を養うことができます。
・高い打点
ボールが高く弾むので高い打点での処理が必要になります。高い打点からの攻撃的なショット・高い打点にコントロールされてもしっかりディフェンスができるショットの習得に効果的です。
・遅いボール
テニスは速さだけを競う競技ではありません。遅いボールをうまく使って、絶妙な間を作り出し、ラリーを展開していく能力が大切です。速く打つと速く返ってきます。遅く打つと相手は攻撃することが難しくなります。クレーコートは球足が遅いので、遅いボールの使い方が学びやすいです。
・粘り強さ
クレーコートは守りきることができるサーフェイスです。球足が遅いので走ることでエース級のボールでも追いつくことができます。粘り強く戦って勝利につなげる経験はテニスの幅を広げてくれるでしょう。
・横着なプレイでは決まらない
小手先だけの横着なショット、ボールにしっかりと足を運ばすに横着して打ったショットでは球が伸びません。球足が遅いので相手のボールの力を利用できないからです。
・展開力を身につける
ただラリーを長く続けてミスを待つだけでは、強い選手には勝てません。速いボールが効かない分、展開力が必要になります。相手の嫌がる所を見抜いて配球し、チャンスボールを作り出すことでポイントにつながります。2手3手先を考えて組み立てていくことを学ぶことができます。
・単調にならない
得意なポイントパターンが1つしかないと相手に読まれてしまいます。単調なプレイでは勝ち切ることができません。自分の得意なフィニッシュの形につなげるポイントパターンをたくさん持っていなければ勝てません。練習の中で得意なパターンを増やす努力をするようになります。
・まずはラリーから入る戦い方
球足の速いコートでは、ジュニアはすぐに決めに行きます。じっくりラリーから入ることをしようとしません。テニスは確率のスポーツですから、早々に勝負に行くパターンだけでは、ポイントを取る確率が低くなります。クレーコートでじっくりラリーから始める経験を積むことで、球足の速いコートでの戦いにも好影響が出ます。
身体への影響
・筋力や身体の使い方が向上する
ボールをしっかりと打たなければ飛ばないので、効率的な身体の使い方を学ぶことができます。またラリーが長く続くので筋力もそれに対応できるようについて行きます。小手先でボールを飛ばし、あまりラリーが続かないサーフェイスでの練習に比べると体力面でプラスに働きます。
・心肺機能の向上に良い
ラリーが長く続いた後でも、次のポイントまでに呼吸を整えなければならないのがテニスです。練習でも試合でも心拍数が上がるシーンが増えるので、心肺機能の向上にも役立ちます。
・足への衝撃が少ない
ハードコートに比べると足への衝撃が少ないので足首や膝、腰への影響が軽減されます。特に低年齢では足裏・足首・膝への衝撃は怪我につながりやすいので、クレーコートは身体に優しいコートであると言えます。
何歳でクレーコートを経験すると一番効果があると言われているか?
国際的なカンファレンスでは低年齢の時期のクレーコート経験が推奨されています。U12・U14です。私の指導経験でも、U16になって競技経験が長くなると、戦い方が固まってきます。戦い方はそのままその選手のテニスの感性です。それが固まってしまう前にクレーコートの経験を積んで、感性を刺激して多様性のあるテニスを構築するのが良いと言われています。
お子様のテニス育成にはクレーコートがおすすめな理由!過去記事集
Part2 オムニコートでプレイするよりも、しっかりと打つ癖が身につく!
Part4 言葉を使ったアドバイスよりも効果的に身体の使い方を習得できる!
Part17 軽く合わせるだけの打ち方では勝てないのが良い!!
Part18 他のサーフェースでは学びにくい高さや遅さの感覚を学べるのが良い!
Part19 上手い選手にプラスαの戦う能力を加えるのに良い!!
Part22 単調なテニスにならずに多彩さを学べるところが良い!
Part23 ハードやオムニとは違った戦う感性を養うことができる!
Part24 先ずはラリーから入るしっかりした戦い方が身につく!
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